2007年12月23日
【せなか企画】 せな★せな 5−3話 「まいむのおむね、やわらかい」
せな★せな 5−3話
「まいむのおむね、やわらかい」
「ですから露天風呂を作ってしまいましょう(はぁと)」
「さんせい」
こいつらもチビ姫やクラヴィエと違って風呂を知ってるんだな。
「露天風呂と言いますと……」
裸にバスタオル姿のクラヴィエは曇った眼鏡を外して、胸元のタオルできゅっきゅと吹いた。
あの、そういうことすると胸元がちょっとヤバイのですが。
「野外や屋外に設置されたお風呂のことでしょうか?」
「はい、そうです〜(はぁと)」
「んっ」
マイムの返事に合わせてシグマはこくこくとうなずいた。
「興味あります。むしろ、強く希望します」
メガネをかけ直しながらクラヴィエが答えた。
「ご主人さま。露天風呂をつくっても良いでしょうか?」
露天風呂といっても、身長10センチ程度のこいつらの風呂だから、せいぜいミニチュアドールサイズだろう。
「別にいいけど、どうやって?」
メイド喫茶を自分で作ってしまうスーパーなメイドさんのマイムなら可能なのかもしれないけど……。
「メイドさんの秘密です(はぁと)」
マイムはいろいろと底知れぬ多いメイドさんだ。
「ただ、わたしの方法だと材料を集めるのに少し時間がかかってしまいますから……」
「マイムさま。それならば私をお使い下さい」
クラヴィエは漆塗り弁当箱の縁から立ち上がる。頬や首筋にしたたる汗がぴちゃりと湯船に落ちた。
その姿は正直、美人度120%増だ。
「と言いますと……?」
「我が文明の万能デバイス、トボス・タタンの物質変換機能を使えばお望みの材料を準備できるかと」
「まぁ! それは助かります〜(はぁとはぁと)」
「さらに言うなら、設計図という素敵なものを頂けるのでしたら瞬時に作成可能でございます」
メガネを中指で押し上げながら、きらり☆と光らせるクラヴィエ。
「わかりました。早速準備いたします〜(はぁと)」
エプロンの内懐から手品のように、製図用紙とペンを取り出した。
毎度のことながらマイムのエプロンの内側はどうなってるんだ?
そんなことに驚きつつ、ふとよそ見をした瞬間――。
「できました〜!(はぁと)」
「早すぎだろ! っていうか、あの一瞬でその線の量はどう考えてもおかしいだろ!」
面図に寸法や加工方法などの情報も書き込まれている、めっちゃすごい設計図だ。
「メイドのたしなみです(はぁとはぁと)」
「……ずいぶんと理系のメイドさんなんだな」
「お褒めの言葉、ありがとうございます(はぁと)」
深々とお辞儀をする工学系メイドさん。
「ついでに、こんなもの作っちゃいました〜(はぁと)」
製図用紙の裏に、もう一枚A4くらいの紙が隠れていた。
それはチラシで、露天風呂のイメージイラストがとても綺麗に描かれていた。K薙さんもB峰さんもびっくりだ。
『メイド喫茶しぐまいむに温泉が出来ちゃいました!』
という宣伝文句も、いかにも女の子といったフォントで書かれていた。
「それでは着替えますので少しお待ちを」
上気して少し肌の赤くなったクラヴィエがお風呂から上がった。
「しつこいっていってるでしょ! もしもわたしをつかまえたりしたらこの宇宙船から追い出してやるんだからっ!」
「はい、魔王さま〜☆ 魔王さまがお望みとあらば喜んで〜」
そういや、こいつらはずっと鬼ごっこしてたのか。
「ティティ〜! そんなやつ追いかけてないで姉ちゃんとニャンニャンしよ? な? なぁ?」
チビ姫ワーニャをティティが追いかけて、ティティをマカマカが追いかけるという、雪崩式鬼ごっこ状態になっていた。
っていうか、ニャンニャンなんていう言葉をなぜマカマカが知っている。俺の世代で既に死語なんだけど……。
「ああ、もういい加減に……へっくちょ!」
風呂上がりで濡れたまま裸にタオル姿で走り回っていたせいか、チビ姫はさすがに身体を冷やしたみたいだ。
「ったく。しょーがないな。ほれ」
ちょろちょろと逃げ回っているチビ姫を捕まえて、ひょいと持ち上げた。
「にゃああああぁぁぁっ! な、何すんのよ! コペケバ! わたしの玉のようなお肌に触ってるんじゃないわよ、この最下層触手生物奴隷!」
「助けてやろうってのに、ひどい言いぐさだな、おい」
そのままクラヴィエの弁当箱風呂に入れてやる。
「ああ助かった……。身体があったまるわ……。触手にしては良い仕事をしたわね」
「触手言うな。助けてやったんだから、もうちょっと何かあるだろ」
「奴隷だから当たり前でしょ。ふん」
なんだ、このツン姫は。
「うぅ〜、魔王さま〜」
「こいつに風邪を引かれたら後が大変だ」
風邪を引くのかどうかわからないけど。
「ああ魔王さまがお風邪だなんて、わたし、そんなことになったら一晩中泣き尽くしてしまいます!」
「じゃあ、少し休憩な」
「……はい。申し訳ありません」
「ティティ〜☆ やっと姉ちゃんに振り向いてくれたんだな!」
「マサツ・セショウ・チブ――トプロ・ジェッキゴ!」
どんがらがっしゃあぁん!!
姉の方を見ようともせず、赤いのついた杖だけを向けて雷撃っぽい魔法を放った。
マカマカの脳天を直撃。やっぱりアニメみたいにガイコツが透けて見えた。
「ぎゃおわおわあぁあぁ〜〜〜〜……!」
なかなか難しい悲鳴を上げて、マカマカは倒れて気絶。
確か前にマカマカがこの魔法を食らったとき、痺れる程度で気絶しなかったと思うんだけど、どうやらティティは密かに呪文の攻撃力をアップさせたらしい。
実姉に容赦ないな。
ま、ようやく静かになって助かったけど。
「素晴らしい設計図なのですが、私の方に少し問題が」
いつもの服に着替えたクラヴィエがマイムから受け取った設計図を見ながら眉を曇らせた。
ちなみに、チビ姫はさっきまでの鬼ごっこの疲れはどこへやら、やたらご機嫌で変身アイドル魔法少女のアニメソングを鼻歌で歌っている。
「まぁ、クラヴィエさま。いかがなさいましたか?」
「我が文明の偉大なる万能デバイスも無から有を生み出すことは少々難しく……。何か物質変換の元になるようなものがあれば良いのですが」
「元になるものですか〜」
マイムとクラヴィエがきょろきょろと部屋内を見回す。
「おいおいおい。まさか俺の部屋のものを露天風呂の材料にしようっていうわけじゃないだろうな?」
「そんなつもりは毛頭ありませんが万に一つもないとは言い切れないような気がしないでもないです」
白々しく視線をそらしてクラヴィエが答える。
「厳密に言うとその可能性はおそらく、ある恒星系におけるケイ素生物の存在確率に等しく、ドレイクの方程式を用いた計算確率にアインシュタインの重力場方程式で知られる宇宙定数の概念を加えますと――」
「……よーするに材料にするってことなんだな」
「ああ、ちょうどアレが質、量ともに良さそうです」
クラヴィエの視線の先にあるものといえば……。
「な!? アルト○イゼン!?」
苦学生にはつらい金額の、俺がずっと待ちわびていたプラモの箱が……もちろん中身は作りかけというか、○ートホーンをつければ完成という、マラソンで言うと最終トラックに入って、あとは数メートル先のテープを切るだけ状態のまま置かれているわけで、ショートケーキで言うと取っておいたイチゴを最後に食べる瞬間というか――。
「ぽちっとな」
いつもの大山のぶ代的なパフォーマンスを、こういうときだけすっ飛ばして、クラヴィエはいつの間にか手首に身につけていたトボス・タタンの赤いボタンを押した。
赤いビームが発射されて、○ルトアイゼンを包み込む……って、ちょ、おまっ!!!
「うわああぁ、何すんだよ!?」
クラヴィエは設計図を、まるで赤ビームを遮るようにその射軸状へ持っていった。しかし、ビームは設計図をすり抜けて、俺の『アルトアイ○ン』を包み込んでいる。
「非常に文化的で効率的な物質変換です」
「持ち主の許可を得ずに、勝手に変換するなぁー!!」
ふわりとアル○アイゼンの箱が浮かび上がった。
「うおあ! な、なんだぁ!?」
そのままゆっくりと移動して畳に着地。モーフィング処理みたいに、うにょうにょと形を変えていく。
「うおおお……!?」
そして、俺の愛機はミニチュアサイズの露天風呂になった……。
っていうか、風呂だけじゃなく脱衣所まであるよ。
「ああ……俺のプラモが……!」
ヘコむ俺をよそに、マイムとシグマのバーニアでチビ姫とクラヴィエは畳へ移動。
「メイド喫茶しぐまいむ特製、メイド露天風呂へようこそ〜(はぁと)。今日のお客様は開店第一号! マイムがばっちりお世話しちゃいま〜す(はぁとはぁとはぁと)」
「わーい」
「まぁ、入ってあげてもいいわよ」
「喜んで浸からせて頂きます」
「ま、ままま、魔王さまと一緒にお風呂!(瞳にキラキラ星)」
マイムの案内で『露天風呂しぐまいむ』という和風なのか洋風なのかイマイチはっきりしない名前の描かれたのれんを潜り、一同は脱衣所へ入っていった。
ごく自然な流れで、気絶しているマカマカは放置されている。
「クラヴィエさまはスタイルが良いですね〜(はぁと)」
「お褒めにあずかり光栄です。ですが、マイムさまの方が素晴らしいかと。お胸も私よりも大きく、つんと上を向いていて、まさしく脱ぐとスゴイを体現しているお身体でございます」
「いえいえ〜、クラヴィエさまの方が形が良いですよ〜。いわゆる美乳、ですね(はぁと)」
「わたし、ない。むね、ないの……」
「シグマはなくていいのよ〜(なでなで)」
「シグマさまにはシグマさまの魅力といいますか需要があると思います。非常に重要なニーズを満たしていると思います」
「んっ。でも、おむねほしい。おちゃ、いっぱいのんでも、ダメ?」
「エネルギー茶の飲み過ぎはダメよ、シグマ」
「うー」
健康な男子ならスルー不可な会話が聞こえてくる。
アルト○イゼンを露天風呂に変えられて大ショックなのに、ついつい気になってしまう自分がイヤだ。
「胸なんて飾りよ! 偉い人にはそれがわからないのよ!」
ここからは見えないが、寸胴のチビ姫が、どどーん! と胸を反らせている様子が目に浮かぶ。
「しぐま、おむね、ほしい……」
「う〜、この子は……! このわたしの美しく清らかなプロポーションをどうして理解できないの!?」
「魔王さまの仰る通りです! 魔王さまは見目麗しく、艶やかで、ああもうわたしはわたしは今すぐにでも襲いかかってしまいます! たぁー!」
「あ、こら、なにするのやめなさいそこはだめだって言って――にゃああああああ〜〜〜〜〜……!」
「ティティさま。湯船に武器はいけません。その杖は没収させていただいちゃいます〜」
「あ、マイムさま、そんな!」
意味不明な寸劇に発展しつつあるところを、マイムが杖を取り上げることで止めたらしい。
「それはクス・クスで代々伝えられてきた儀仗なんです、マイムさま!」
「少しの間、預からせていただくだけですから、ご安心を(はぁと)」
「うう、わかりました……」
マイムが有無を言わさぬ笑顔という力業でティティをねじ伏せた。このメイドさんは無敵だな。
「さぁ、湯船へ参りましょう〜(はぁと)」
からからから……とガラス製引き戸の音がした。
「わぁ〜、すごい……!」
「私とマイムさまで作り上げた露天風呂、如何でしょうか、姫さま」
「コペケバのマンガで見た通りよ! さすが私の侍女ね!」
「お褒めにあずかり光栄です」
「みなさん、かけ湯をして入りましょうね〜(はぁと)」
マイムの声に従って、じゃばーじゃばーとかけ湯をする音が聞こえた。
そして、ちゃぽっという湯に浸かる音も。
ちなみに何度も言うが、ここからでは見えない……。
「んんん〜、熱い〜! う〜!」
「姫さま。そこを我慢です。耐えるのです」
「シグマ。ほら、おいで」
「あつい……」
「すぐに慣れますよ」
「うう、あつい……」
マイムはお風呂に入ることをためらっているシグマをお母さん的立場で導いている。
「ああ魔王さまがお風呂に……魔王さまがお風呂にいいいいぃぃぃーーーー!!」
「ひゃああああああぁぁぁーーーー!!」
とうとうキレたティティがチビ姫に襲いかかったようだ。
しかし、突然ばちーん! とものすごい破裂音が響き渡った。
「う……あぁ……ふぐ……うぅ……」
そして、ティティのうめき声の直後、ばしゃーん! と何か――たぶんティティ本人――が湯船に落ちる音がした。
「は、鼻がっ、鼻がっ、うぅ……!」
「説明が遅れて申し訳ありません、ティティさま」
クラヴィエがティティに声をかける。
「姫さまに落ち着いて湯を楽しんで頂くためにフィールドをはらせて頂きました。ティティさまが姫さまに近づくとバリアのようなものが発生します」
「そ、そんなぁ〜!」
「もちろん私たちに近づいても何も起こりません。姫さまの場合のみの処理です」
「うぅ、魔王さまぁ……」
涙声のティティ。普段の行動を考えれば自業自得だ。
「これでゆっくり入れるわ! さすが私の侍女ね!」
「お褒めにあずかり恐悦至極光栄です。我が文明が誇る万能デバイスにかかれば簡単なことです」
簡単なことなら普段からバリアを張ってやれよと誰もツッコミを入れないのは何故だろう?
「それにしても、やはり露天風呂という割には室内では風流も何もありませんねぇ……」
はぁ……とマイムがため息をつく。
「私も同意します。肝心の夜空が見えないことには露天風呂とは言えないのではないでしょうか?」
「マンガだと、ちゃんと星が見えてたわね」
何やら、またまた不穏な会話をしている一同。
「しぐまがほしをみえるようにする」
ま、まさか……。
「第二種航宙域における通常戦闘哨戒装備」
ぼそっとシグマが呟く。
その瞬間、どこからともなくシグマの装備パーツが飛んできて、露天風呂の方へと向かっていく。
しゃきーん、ばしゅーんという妙な効果音がいくつか鳴る。どうやら装備が完了したらしい。
「空間穿孔砲、安全装置解除」
きゅーーーーーん……と充電音が鳴り始める。
「まぁ、裸で装備をまとうなんて、はしたないですよ、シグマ」
「でも、よぞら……。しぐまがあな、あけるから」
「待て待て待て待て待て待てぇーーー!」
天井に穴を開けられてたまるか!
「その怪しげな充電をやめろ!」
「きゃあ!」
「おや」
「まぁまぁ」
「む?」
「魔王さまぁ……しくしく」
露天風呂が思いっきり見える位置に回り込んだら、それぞれチビ姫、クラヴィエ、マイム、シグマ、ティティの順にリアクションが返ってきた。
「あんたなにちゃっかり見てるのよっ! ていうかその触手に隠し持ったムービーカメラでばっちり撮影して地●波放映時には湯煙追加で放送コードを回避してD▼Dではノーカット収録しようたってそうはいかないわよっっ!!!」
「このタイミングで触手とか奴隷とか言うな! だいたいお前らの裸なんて見たところで、いちいち動揺するか」
マイムとクラヴィエにはちょっとドキドキするけど。
「とにかく屋根に穴を開けるのはやめてくれ!」
「では、あそこにこの露天風呂を運んで頂けないでしょうか?」
クラヴィエが指さしたのは部屋の出窓部分。
確かに、そこなら夜空が丸見えだ。向かいに建物はないし。
「わかったよ」
俺はちゃんと見えないように反対側から持ち上げて――思ったよりも軽い――出窓部分に置いてやった。
「ありがとうございます、彼方さま。しっかり夜空が見えますわ(はぁと)」
「へいへい。勝手にやってくれ」
……もう疲れた。
俺はふて寝して、テレビを付けた。声が気になって仕方なくなるので、リモコンのボタンをぽちぽちと押して音量を上げる。
「せっかくですので気絶しているマカマカさまを湯船に入れておきましょう〜(はぁと)」
マイムのその声がした後に、バーニアをふかす音がする。
たぶんマイムがマカマカを風呂に引っ張っていくんだろう。
にぎやかな声がする中、
「スイッチ、オーーーンっ!」
とやたらと気合いの入ったクラヴィエの声が聞こえた。
同時に、ぶつんとテレビが消える。
「なっ!!? テレビが壊れた!? 買ったばっかりなのに!?」
かぶりつくように画面に顔を近づけるが傷とかは何もない。
何度もリモコンの電源を押していると、ぷつっと画面がついた。
|
マイムの胸をモミモミするシグマ。大きなおっぱいに対する憧れは強い模様。しかし、シグマにはシグマのニーズというものがあるわけで、それを考えるとシグマは巨乳になってもらっては困るわけで……。
|
「気持ちいいわねぇ〜」
「うぅ、魔王さまぁ……えぐえぐ」
「お肌が艶々になりますね。これは素晴らしい」
て、テレビ画面に露天風呂の光景が映った!?
これはクラヴィエのデバイスから見た映像なのか……?
画面が激しく上下に揺れたりしているから、たぶんそうだ。
「まいむのおむね、やわらかい」
「まあ、シグマったら。ちっちゃな赤ちゃんみたいねえ」
おおっ、シグマがマイムの胸を触っている……!
もちろん、そのため胸の大事なところは隠れているけれど……。
しかし、むにゅむにゅと形を変えてるところを見ると、本当に柔らかそうだなぁって何を言ってるんだ俺は。
「目の毒だ。チャンネルを変えよう……」
リモコンのボタンをぽちっと押す。しかし、画面は変わらず風呂のまま。
「全チャンネルが風呂放送専用になってるじゃないか!」
クラヴィエの策略か……!
マイムの胸を揉むシグマの映像が突然艶めかしい太ももに切り替わる。
「な、なんだ……?」
どうやら露天風呂の縁に腰掛けているらしい。
カメラは濡れた太ももをなぞるように上へと移動。
まさかとは思ったが、さすがに真っ裸ではなく、ちゃんとタオルを巻いていた。
しかし、タオルと肌が密着しているため身体のラインがはっきりと見て取れる。
画面にはとうとう胸がアップに。形の良く整った、まさに美乳といった感じの胸だ。
ついつい釘付けになってしまう。
そのままカメラは、うなじに移動。髪はアップにされていて、湯と汗で濡れたうなじは妙に色っぽい。
露天風呂というシチュエーションの成せる技だと思う。
食い入るように見ていると画面は、幸せそうに湯船に浸かるチビ姫に変わった。
その後ろにいるティティはチビ姫に触れることができず、涙目状態だ。
さらに、その後ろには気絶しているマカマカがぷかぷかと浮いていた。
そして画面は元に戻る。
相変わらずシグマはマイムの胸を好奇心いっぱいに揉んでいた。
「シグマ。少しくすぐったいですよ」
「おむね、ほしい……」
「先ほども言いましたがシグマさまは、そのままの方がニーズを満たしていると私は考えます」
「くらう゛ぃえのおむねも、かたちきれい」
「これは光栄です」
「さわってもいい?」
「構いません。どうぞ」
おお、シグマがマイムの胸から手を離すぞ……!
思わず注目してしまう俺。
あまりに凝視しているせいか、シグマの手が下ろされる瞬間、まるでスローモーションのようにゆっくりと……。
――ぱっ。
と画面が切り替わって『これは有料チャンネルです』と表示される。
「…………」
なんだ、そりゃあ!!
「くらう゛ぃえのおむねもやわらかい」
「そもそも女性の胸とは柔らかいものですから」
「でも、これはかたい」
「にゃあ! いいいいい、いきなりわたしの胸を人差し指を突かないでよ!」
きゃいきゃいと聞こえる楽しそうな声。
「うぅ、魔王様の裸が目の前にあるのに……」
「まぁまぁ、ティティさま。今は純粋に湯を楽しみましょう(はぁと)」
「……はい」
こっちは妙に悲壮な声。
悲喜交々(ひきこもごも)だな……。
「では、みなさん。そろそろ洗いっこでもしませんか?(はぁと)」
あ、洗いっこ……!?
なんていうシチュエーションだ……。
この有料チャンネル表示が憎い。
と思ったら突然画面が映った。
「どうも」
クラヴィエのアップだ。
「やっぱりお前が原因だったか」
「堪能して頂けましたか?」
「ま、まぁ、一応……」
「肝心なところをお見せすることはできませんが」
クラヴィエが唇の端をかすかに釣り上げて、にやりと笑った。
「……くっ! 純情な男心をもて遊びやがって!」
「まだまだ続きますが、ひとまずこれにて。では、また後ほど」
そして、テレビ画面がいつもの放送に戻った。
バラエティ番組の笑い声が聞こえる。
「はぁ……。俺も風呂に入るか」
せなか荘に風呂はない。だから毎日銭湯通いだ。
俺はせっせと準備をして部屋を出た。
「ん? さっきクラヴィエは、また後ほどって言ってたな。ってことは……またまた次回もサービスサービス?」
〜つづく〜
文・神野マサキ(ユニゾンシフト)
イラスト・こぶいち(ゆずソフト)
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