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2008年01月13日

【せなか企画】 せな★せな 6−1話 「クス・クス最強の戦士であるアタイが、なんの因果か下っ端メイド……」




せな★せな 6−1話
「クス・クス最強の戦士であるアタイが、なんの因果か下っ端メイド……」




 俺、空木彼方は実に無様な格好で、畳の上に突っ伏していた。
 どこから取り出したのか、口に含んだお酒……のようなものを、プゥッと自慢の愛剣に吹きかける、ビキニ鎧の女戦士の姿。
「さ〜て、ノナドポイア。いまこの大きいやつの血をたっぷり吸わせてやるからな」
 いつもは無気力そうな瞳をしているインテリジェンス・ソード。
 今日ばっかりは鋭く俺のことを睨み付けていた。そう、まるで獲物を欲するように……。
「ゆ、許し……ぶへっ」
 命乞いをしようにも、気の抜けたような声しか出せないでいる。
「よくもあたしの可愛い妹を、ティティの玉のような肌を、このあたしでさせ触ったことのない※※※や※※※を、そのイヤらしくも汚らわしい触手で撫で回してヌメヌメドロドロにして、まさに犯しつくさんとしてくれたなああぁぁぁぁ」
(違う……違うんだ)
 なにもかも誤解なのに、この単細胞のミニマム星人は言うことを聞きゃあしねえ。
「もう我慢の限界だっ。すっぱりその頭を切り落として、粘液にまみれた人生を終わらせてやる!」
 巨大な剣を手に、ジリジリとにじり寄ってくる。
 目は据わっており、明らかに本気と書いてマジだった。
 虚ろゆく 彼方の意識 終生かな。(字余り)
 母さん、どうやら僕はここまでです!
 そもそも、なぜこんなことになったのかと言うと……





「魔王さまぁ〜。ちょうどいいお湯加減になりましたよ〜」
「フン、あんたにしては気が利くわね」
 正月も明けて、早二週間。
 あけましておめでとうございます!などと言ってみたところで、異星人にそんな風習があるわけもなく。
 ここせなか荘では、いつもとなんら変わりのない日常が繰り返されていた。
 具体的に言うと、身長10cmの小人たちが身の回りを引っかき回す、まったく嬉しくないハーレム状態のことだ。
 性別はみんな♀のはずなのだが、世に数多ある『そんなこと言われても、みんな可愛くて一人を選ぶなんてできないよ〜』という夢の一つ屋根の下でストーリーとの絶望的な違いはなんなのだろう。
 ……などといまさら愚痴っても仕方がないので、オタロードでゲットした冬の某イベントの新刊を、『やっぱりミクはいいよなぁ』などと思いながら現実逃避気味に読みふけっていた。
「じゃあ、さっそくお風呂にしますか? それとも……イ・ケ・ニ・エ?(はぁと)」
「だああっ、甘い声を出しながら肩を出すんじゃないわよっ!」
「まぁそんな、両方だなんてっ……魔王さまのよくばりっ(はぁと) 」
「なんでそういう話になるのよ、この色ボケ巫女っ!」
「そうですわよね、お湯あみの中でそのなめらかな肌を朱に染め、水滴を玉とはじかせながら、生贄の肢体を貪る……このティティ、そんな魔王さまのご思慮をくめず、紅顔の至りですわ〜」
「くっつくんじゃないわよ、離れなさいよ離れなさいよ離れなさいよっ!」
「ささっ、羞恥心という名の薄皮を剥ぐように、一枚一枚お召し物を剥ぎ取ってくださいませ……はれ?」
 いつものごとく、ワーニャにすりすりとその身を寄せていた、ティティの姿。
 いつの間にやら宙に浮かんで、愛しの人から離れてしまっていた。
 それというのも、俺が摘み上げたからなんだけど。
「ちょっとは静かにできないのか、お前たちは」
「ナイス、コペケバっ。一段と触手に磨きがかかったようねっ」
「指だ、指」
「ああ……せっかくの魔王さまとの蜜月がぁぁ〜」
 未練がましそうに、じたばたと手足をバタつかせている。
「そもそも、なんでお前達はわざわざ俺の部屋にやってくるんだ」
「はぁ〜、コペケバはほんっとバカね」
 いつも偉そうな姫様から、ビシっと指を突きつけられる。
「あんたの部屋にしかお風呂がないからでしょっ」
 こいつらが風呂代わりにしているのは、俺の買ってきた高級茶碗6000円なり。
 他に使用用途があるわけでもなく、普段は本棚の上のインテリアとして何の役にたつわけでもなく飾られているのだ。
「まったく頭が悪いわね。あんたが一日五回お湯を汲んでわたしのもとに日参すれば、こんな苦労をしなくてすむのに」
 しずかちゃん並みにお風呂に入る気なんだろうか。
「ま、あんたの知能にそこまでを望むのは酷みたいだから、このプリンセス★ワーニャ直々に下僕の元を訪れてやっているのよ。感謝しなさい」
「ハイハイ。しかしこの小うるさいのまで連れてくることはなかろうに」
「姫には従者がつきものなのよ」
「クラヴィエがいるだろ」
「なんか、宇宙船の航路計算で手が離せないらしい」
 ……単に面倒くさくてつき合っていられないってことか。
「とにかく、その色情魔を捕まえておきなさい。これからわたしの楽し〜い入浴タイムなんだから」
「ああ……こんな近くにいる魔王さまに触れることができないなんて……生殺しですわ〜、寸止めですわぁぁ〜」
 じたばた、じたばた。
 別にワーニャの貞操がどうなろうといいのだが、しかし読書の邪魔をされるのもかなわない。
 どうしたものかなぁと息を付きながら、活きのいい様子を眺めていた。
「せっかく……はいてきませんでしたのに」
 ピタ、と空気が止まる。
「はいてないって、おまえそれは……」
「だって魔王さまとお風呂でじゃれあうのに、はいてたりつけてたりしたらもどかしいではないですかっ」
 ほっぺたを赤らめながら、恥じらいつつも興奮した様子を見せている。
 それはナニか、この俺が摘み上げているゆったりとした法衣の下には、一糸まとわぬ生まれたままの姿が……
「っていうかもう、クロス・アウトですわっ!」
「わあああああっ!」
「きゃああああああっ!」
「魔王さまぁ〜(はぁとはぁとはぁと)」
 ルパン三世よろしく、服をすっぽりと脱ぎ捨てて、宙に躍り出る!
「って、それはまずいっ!」
 お風呂に浸かっていたワーニャの元へとダイブしようとしていた、その姿。
 倫理規定とか放送コードとかレーティングとか、そんなことが頭をかすめて、咄嗟にわしづかみしていた。
「ナイスよコペケバっ! 今日は触手絶好調じゃないっ」
「ううう……こいつめ、意外と心地いい肌触りをしやがるっ……」
「ああん、魔王さまぁ〜魔王さまのために清らかなままでいたこの身体、こんな触手生物の慰みものにするなんて、ひどいですわ〜」
 遂にティティにすら触手呼ばわりされてしまった。
 ワーニャの裸体を前にして、トリップしているとはいえ……ちょっと傷つくぞ。
「と、とにかく服を着ろ、服を」
「……でも、それも倒錯したラヴ?」
「聞いちゃいねえし……」
 小さな身体を、俺の手に平に収めたまま、暴れたりウットリしたりと忙しい。
 まったく、なんて状況だ。
 こんなところ、あのマカマカに見られでもしたら……
「ティティーーーっ! お姉ちゃんと一緒にお風呂入るぞ〜!!!」
 突然バン、と扉が空いた。
 そして聞こえてくるのは、脳天気な破滅を呼ぶ声。
「………あ」
 ぽかんとした顔。
 マカマカは、俺とティティの姿を、バッチリその視界に収めていた。
「………」
 無言。怒号が飛んでくるかと思ったが、ただただ無言。
 じっと俺を見つめたまま、マカマカはスタスタと歩いてくる。
「違うんだっ! これはな、ほら色々な事情と成り行きと不可抗力があって、その上で偶然成り立った不可思議な状況というかなんというかっ」
「ボディ!」
 ドゴスッ!
「重ッ!!」
 小さな身体からは想像も出来ないほど効く、左脇腹45度へのボディブロー。
「てめえええええええええええ、お姉ちゃんも触ったことのないティティの裸体をおおおおおおおっ!!!!!」
 その表情が、憤怒に彩られていく。
 嫉妬という名の痛恨の一撃を喰らって、俺は畳というマットへ沈み込むのだった……


 ☆


「ねねねねねね姉さまっ! コペケバ様は魔王さまの下僕ですよっ。勝手にお命を奪っては……!」
「いいんだよっ。ほらいまだって物欲しそうに穴という穴から粘液を垂れ流しているんだぞっ!」
 これは涙と鼻水と涎です……
「まだ興奮して、隙あらばティティの愛らしいラインを愛でようとしているんだああっ!」
「魔王さまっ! 魔王さまからもなにか言ってやってくださいませっ」
「え、えー……オホン」
 まだ湯船に浸かったままのワーニャ。顔だけ出して、なにやら神妙な面持ち。
「コペケバっ! あんた結構いいやつだったわよっ。お墓ぐらい建ててやるんだからぁっ!」
「ツンデレに死亡宣告するなあああああああっ!!!!」
「よぅし、覚悟はいいなっ!!!」
 ……終わった。
「死ね!!!!」
 物騒な言葉と共に、振り下ろされるノナドポイア。
 もはや目をつぶるしかなく、真っ暗闇の中、けたたましい発砲音と共に俺の意識は途絶えた。
 ………
 ……
 …


 ……発砲音?


 ☆


「ほら、お目覚めですよ、マカマカ様」
「ふんっ……言えばいいんだろ、言えば」
「はい、せ〜の」
「ハァ〜……お目覚めですか、ご主人様っ」
 目を覚ますと、メイドさんがいた。
 ああ、ここは100%死後の世界なんだなと理解した。
 やっぱりアレだろうか、最近は天国も今風にして、需要を考えないとやっていけないのだろうか。
 いや、もしかして輪廻転生の末に、再び人間として生まれ変わったのだろうか。
 もしそうなら、俺はメイドさんのいるお屋敷のお坊ちゃまに違いない。
 こんな幸運の星の下に生まれるなんて、よっぽど前の人生がハズレだったってことか。
 そりゃあ、変なミニマム宇宙人に襲われ殴られ殺されるなんて……
「……ううう、なんであたしがこんなことを」
「駄目ですよ、そんな顔をしては。メイドの基本は……笑顔、ですっ!」
 ……気のせいだろうか?
 俺の前にいる、二人のメイドさん。
 両方とも、すごーく見覚えがある風体なのは……というか、明らかに体長がちっちゃい気がするのは……
 一人は、腰に無骨なバーニアのついた、ツインテールの女の人。メイド服の着こなしも堂に入っている。
 そしてもう一人。モップ片手にお掃除の途中らしい姿。確かどこかで見たような……ほら、死を覚悟して気を失う前に……。
「ともかく、改めましてご挨拶です」
 ぽんと手を叩いて、柔和なほうのメイドさんが、二つにまとめた髪を揺らす。
「生死の淵から、メイド喫茶『しぐまいむ』へ、ようこそお帰りなさいました♪」
「……へ?」
 聞き覚えのある単語に、思わず気の抜けた声が漏れる。
 身体を起こして、辺りを見回してみる。
 そこは、見慣れた畳敷きの六畳半。
 間取りは俺の部屋と同じだが、部屋の中央はドールハウスが鎮座ましましている。
 ここは(ワーニャ曰く)大機関室、せなか荘の管理人室だった。
「俺の人生、絶賛継続中か……」
 泣いてなんかないよ。
 泣いていたとしても、それは生きていてよかったからだよ。
「えっ、じゃあ……もしかして、助けてくれたのか?」
「はいっ。危なかったんですよ。シグマが駆けつけるのが遅ければ、それは無惨なことになっていたでしょう」
 にっこりとメイドさん――マイムは笑って、なにやら手招きする。
「ほら、照れてないで出てきなさい」
 ドールハウスの裏から、しゅごーっとバーニアを吹かせながら、シグマが姿を現す。
「2mm(現地単位)チェーンガン……効果てきめん……」
 新型兵装らしいピカピカのガトリングガンを見せつけて、どこか得意げにしていた。
「なるほどなぁ、どうりで銃声を聞いたはずだ……」
「協定地域での戦闘は調停対象ですからね〜。リンスフィアによる永久講和条約第6条14項において、武力介入しちゃいました」
 いや、そんなさらっと物騒なことを言われても。
「じゃあ、ほかのちびっちゃいのは……」
「ワーニャお嬢さまは『全部コペケバのせいなんだからっ! わたしは全然なんにも預かり知らないことなんだから煮るなり焼くなり好きにしてちょうだいっ! っていうかもうのぼせちゃうから帰る〜。クラヴィエー! コーヒー牛乳出して〜』とのことです」
「ものの見事にトカゲの尻尾切りだな、おいっ」
「ちなみにティティお嬢さまは『全部姉さまの仕業ですっ! っていうかもう身柄預けますのでなんなりとご自由に処分してくださいっ。っていうか魔王さま〜、お背中濡れていますわ〜』とのことです」
 ……流石メイドロボ。記憶力は抜群だった。
「今回の非はクス・クスにありますので、彼方様の責を問うことはありませんよ」
「そりゃよかった……じゃあ、マカマカは?」
「マカマカお嬢さまは、度重なる協定違反の罰則として、タウル・ゾビスへの懲罰奉仕を行っていただきます」
 聞き慣れない言葉だった。
「彼方様は、なにゆえ争いごとが生まれるとお考えになりますか?」
「いきなり難しい質問だな。ええと、そうだな……みんな自分のことばっかり考えているから?」
「素晴らしいお答えですっ!」
 パチパチと拍手されてしまう。
「まさにその通り、つまり他人を思いやる気持ちがあれば、この世から争いはなくなるはずなのですっ」
 なんだか、いいことを言っているような気がする。
「つまり、すべてのものはメイド的奉仕の心を持つべきなのですっ!」
 が、やっぱりズレていた!
「そんなわけで、マカマカお嬢さまにはメイドとして、イチから奉仕の精神を学んでいただいちゃおうと思っているわけです」
「……メイドとして?」
 ちらりと、さっきから気怠く床掃除をしている、その隣の姿を見やる。
「……ハァ」
 モップを片手に、大きなため息をついている姿。
 ヒラヒラのフレアスカート。いつものビキニ鎧ではないのでその印象は大きく変わっているが、紛れもなく……
「マ、マカマカ!?」
「ハッ……笑いたければ笑うがいいさ」
 自嘲気味な笑みを浮かべながら、自身の姿を見やる。



「クス・クス最強の戦士であるアタイが、なんの因果か下っ端メイド……」
「いや、一人称まで変わってるし」
「不意を突かれたとはいえ、ノナドポイアまで奪われちまうし……あああああーっ、こんなんじゃティティを守れないじゃないかーっ!!!」
「一人前のメイドになった暁には、すべて返して差し上げますよ」
 有無を言わさぬ様子で、にっこりと微笑むマイムさん。
「ちなみに、反抗するとシグマのお仕置きがまっていますからね〜」
「ターゲットロック……照準アレイ起動、マーカーリンク開始……」
 威嚇するように、ガトリングガンの銃口が向けられる。
 バレルの回転するひゅーんという低い唸りの中、マイムさんの宣告が響くのだった。
「では……これから彼方様の専属メイドとして、たっぷりと奉仕の心を学んでくださいね♪」


〜つづく〜


文・丘野塔也(ビジュアルアーツ・Frill)
イラスト・らっこ(HOOK)


【せな★せな 関連情報】
せな★せな 1−1話 「ここはわたしの宇宙船よっ!」
せな★せな 1−2話「おまえじゃなくてワーニャ姫よっ!」
せな★せな 1−3話 「我が王家の名において、わたしの奴隷になりなさいっ!!」

せな★せな 2−1話 「魔王さまに捧げるために、この身をしかと清めてまいりました」
せな★せな 2−2話 「あたしの妹をいじめたのは、どいつだっ!!」
せな★せな 2−3話 「あ……魔王さまのここ、柔らかくて温かい……」
せな★せな 2−4話 「四の五の言わずに戦って死になさいっ!」

せな★せな 3−1話 「未登録宙域における戦闘示威行為を確認」
せな★せな 3−2話 「この落とし前どうつけてくれちゃう気よっ!」
せな★せな 3−3話 「ご主人さま、お嬢さま、大変長らくお待たせいたしちゃいましたぁ!」

せな★せな 4−1話 「世界の中心日本橋にどーんと自社ビルや!」
せな★せな 4−2話 「クラヴィエ、行きまーす!」
せな★せな 4−3話 「よくわからない悪の黒幕的ななにかっ、覚悟しちゃいなさいっ!!」

せな★せな 5−1話 「わたしの美しく清らかな肌を見てるんじゃないわよっ!」
せな★せな 5−2話 「女性の魅力溢れる私の身体に何か?」
せな★せな 5−3話 「まいむのおむね、やわらかい」
せな★せな 5−4話 「なにすんのよ、このエロ下等触手生物ー!」

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コミックガム12月号発売 「せな★せなコミック連載ハジマタ!!キタキタキタキター!!」

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