2008年02月17日
【せなか企画】 せな★せな 7−2話 「こういう時のために色々と技を考えていたんだ」
せな★せな 7−2話
「こういう時のために色々と技を考えていたんだ」
「現状を整理してみようか」
俺はシグマイムの一角のテーブルに全員を集めて口火を切る。
目の前にはチビ姫、クラヴィエ、マイム、シグマ、そしてティティ…が、二人。
とりあえず先ほどまでにちなんでティティAとティティBとしておこう。
「鏡でもないのに自分の姿を見るというのは不思議な感じがします」
「このようなことがあるのですね」
しかも言動がそっくりなのでチビ姫の時よりタチが悪い。
「これってどういう現象なんだ?」
俺はマイムを見る。
「おそらくなんですけど、ガンゲ・ル・ペッドは生存本能の強い植物なので、より強い生き物に擬態したんだと思います」
「なるほど」
つまりこの植物はチビ姫より、クス・クスの巫女の方が種として強いを感じで姿を変えたわけだ。
まぁ確かに食ってわめくしか能の無いワガママお姫さんより、魔法の使える巫女さんの方が生き延びる力を持ってるわな。
「例によってどちらが本物かわかりませんね」
除草剤の入った注射器を手にしたままのクラヴィエが一歩前に足を進める。
「幸いどちらも同じ性格のようですし、片方が×んで…いえ、枯れても問題はなさそうですね」
「いやー、あながち同じとは思えないがなぁ」
ティティ×2は同じ格好で座って、やはり同じ顔で俺を見た。
「質問、お前らにとってワーニャ姫は?」
『この身の全てを奉げるべき魔王さまです』
声が見事にそろっていた。
「えーと、じゃあその身の奉げ方ってのは具体的にどんな感じだ?」
「それはもちろん魔王さまの細い指が私の中の方まで入ってきてゆっくりとうねって…」
「魔王さまの望む形で…。心をと仰れば心を奉げ、心の臓をと仰れば胸を裂きましょう」
お、あっさりと二つに分かれた。
エロいのをティティAで、真剣に生贄思考な方をティティBにしておこう。
チビ姫の原理でいくと、性格が変わっていなかったので本物はエロいAの方になるんだが…。
「マイム様、どちらが本物のティティ様かわかりますか?」
「そうですね、ワーニャお嬢様の時は性格模写も本人に対する洗脳も無かったけれど、今回も無いとは言い切れないですしね」
「………」
なんだろ、この二人の会話には黒いものを感じて仕方がない…。
「おい、チビ姫。お前ならどっちがどっちかわかるだろ」
「こんなにそっくりなものどうやって見分けるのよ?」
「ほら、重ねた肌の感触とか舌使いとかで」
「わっわかるわけないでしょっ!!」
「いえ、それはとても良い案だと思います」
キリっと目に強い光を携えて言ったのはティティA。
「魔王さまのご意思でしたら喜んでこの身をお試しください」
Aに負けじとティティBも頭を下げながら己の献身ぶりをアピールする。
「いっそ二人同時でお試しになるというのはいかがでしょう」
クラヴィエが恐ろしい提案をした。
「ク、クラヴィエ! あんたなんて事いうのよ! ひ、一人でも大変なのに二人同時なんてっ」
当然あせるチビ姫。しかしティティ×2はこれまさに天啓と、目をキラキラさせていた。
そして示し合わせたようにティティ×2は同時に立ち上がる。
「さあさあ、魔王さまあちらへ行きましょう(はぁと)」
「同時ならばこそその微細な違いにも気づくというものです」
「いいいいいいぃぃぃやあぁぁぁぁぁぁー! はぁぁなぁぁしてぇぇぇぇぇえええ!」
哀れワーニャ・ド・フラゴラセ…以下略。生贄の巫女二人に両手を引かれてまたしても物陰へと姿を消そうとしている。
「いいのか?」
一応、侍女であるクラヴィエに訊いてみる。といってもけしかけたのもこいつだったな。
「ティティさまより姫さまが弱いということはガンゲ・ル・ペッドの性質でわかりましたので、また姫さまが増殖することはないので問題ありません」
「まぁお前がいいんなら別にかまいやしないけど」
「…いつもどおり」
引きずられていくチビ姫を眺めながらシグマがポツリと呟く。
ああ確かにそうだなぁ。数が違うだけでやってることはいつもどおりだな。
じゃあ特に気にする必要もないか。
…いや、いつもどおりというにはやや物足りないか。
ドドドドドドド
そう、こんな感じで乱暴な感じの…。
ドドドドドドドドドド
無遠慮で不躾で粗雑で凶暴…。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドド
バン!
激しい音を立てて「しぐまいむ」の扉が開く。
その音にシグマの目が照準を合わせるようにキュイキュイと音を立てて動くのがわかった。
「ティティー! 鳥を食べるときは嘴をとった方がいいぞー!」
俺の知る限りでは生物最強の女戦士マカマカ参上。
メイド喫茶にいる全員の視線を受けている。
「ん? なんだ? いつもより人数が多いな」
マカマカもまたこっちをぐるりと見回して…。
「んなっ!」
ある場所で顔を止める。
当然、ティティ×2の場所だ。
「テ…ティティ…? なんでティティが増えてるんだ?」
ティティAは今にも舌打ちしそうな顔で、ティティBはキョトンとした顔でマカマカを見ていた。
戦いのエキスパートもこういった局面には遭遇したことが無いらしく、さすがにうろたえている。
一方通行の愛とはいえ、妹がいきなり増えたんだから当然のことだろう。
「説明いたしましょう」
クラヴィエは放心状態のマカマカに近づくと、眼鏡を位置を指先で整えてから言った。
「分裂しました」
「嘘をつくなあぁーーーーーーーーーーー!」
思わず叫んでしまった。
澱み一つ無いそのセリフはマカマカ程度の思考回路だと信じてしまう。
しかしクラヴィエは口を止めない。
「巫女という神聖な職につくことに、どこか心の葛藤があったようで、いつしか正義の心と暗黒の心を持ち合わせていたようです。そして二つの相反する心は一つの肉体では共存できなくなり、このような事態になりました」
「ティティ…そうだったのか…ごめんな、姉ちゃんおまえのそんな気持ちに気が付かなかった…」
うわ…信じてるよ。
しかも落ち込んでるし。
「大丈夫だティティ! おまえが増えても姉ちゃんはおまえの姉ちゃんのままだぞ! 倍の動きをすれば問題ない!」
「じゃあとりあえずわたしを解放させなさいよ! こんなのに二人掛かりで連れ込まれちゃ身が持たないわよ!」
「そうか、ティティ、それが欲しいのか。いいぞ、好きにして文句を言うようだったら姉ちゃんが黙らせてやるから思いっきりやりな。あ、でもティティが二人ならそのチビ助も二人必要だな。縦に斬るのと横に斬るのどっちがいい? 姉ちゃんがんばるぞ」
あ、どうやらマカマカはこっちが思っていたより混乱から回復していないようだ。
よく見れば目が微妙に焦点あってないし。
「な、なななな何怖いこと言ってんのよ! なんで半分こよ! 半分で満足なの? 欲しかったら取り合いなさいよ! 器がちいさいわね!」
チビ姫はチビ姫で混乱している。
「マイム、そろそろ誤解をといてやってくれないか」
「そうですね。このままだとお店の中がすごいことになっちゃいそうですし。お掃除が大変なんですよ※▽って」
あれ…、今このミニマムメイドロボも怖いこと言った…?
「マカマカお嬢様。ティティお嬢様は分裂したわけじゃありませんよ」
「…え? そうなのか?」
「はい。これはガンゲ・ル・ペッドという擬態能力を持った宇宙植物のせいなんですよ」
「ガンガル…? よくわからないけどつまりどちらかが偽者ということか?」
「はい、そうです」
「そうかー、硬くて青臭くてまずいくせにティティに化けるなんていい根性してるじゃないか」
マカマカはそう言いながらノナドポイアの柄に手をかける。
「そうだな、血を分けた姉妹ならどっちが本物かくらいわかるな」
もしくは戦士としての勘。ここはマカマカの真価が問われる局面だな。
両手でしっかりと握り、上段に構えたノナドポイアの大きさはまだ俺の人差し指ほど。
けどそれはティティサイズならば十分な凶器だ。
「選ばせてやる。偽者は名乗り出ろ、そしたら痛みがないように※してやる」
おお、ちょっとカッコいい。
しかし、というか当然だがティティはどちらも動かない。
それどころか、マカマカをスルーしてワーニャを再び引きずり始める。
「きゃあああああ! 離せーーー! やめてーーー! つれていかないでぇぇぇぇ!」
姫さま必死。
スルーされた戦士はというと、これはもう内心穏やかなはずも無く。
目の色を真っ赤にさせて、髪の毛も炎のようにゆらゆらと逆立てている。
片方のティティは本物でまぁいつもの対応だから良いんだろうけど、もう片方は植物。
つまりマカマカにしてみれば植物に無視されたことになる。
「うがああああ! 植物のくせ! あたしの可愛い妹に化けるなんてーー! 真っ二つにしてそのまま土に埋めてやるーー!」
叫ぶや否やマカマカはティティ×2に向かって跳んだ。
その目は完全に凶戦士。
最愛の妹の姿を斬ることなんてできないと思っていたが、案外その逆で、妹の姿を模した事が彼女にとって最大の侮辱となっているのかもしれない。
そしてマカマカにはわかってたんだろうか。
彼女の持つ生きた剣は、真っ直ぐティティBの方へと走っている。
「やめてマカマカお姉ちゃん!」
その声にマカマカが止まった。
皆も止まった。
俺たちの知るティティのマカマカへの呼び方は「マカマカ姉さま」だ。
今の「お姉ちゃん」の響きは新鮮だった。
ティティBは掴んでいたチビ姫の手を離すと、マカマカに真っ直ぐ向き直る。
「もう、マカマカお姉ちゃん、あんまり暴れちゃ皆の迷惑だよ。でもこれはわたしの為にしてくれてるんだよね…いつもは素直になれないんだけど…本当は感謝してるんだよ」
ああ、そこにはクス・クスの巫女ではなく、「妹」のティティがいた…。
マカマカは手にしていたノナドポイアを床に落とす。
そして細かく肩を振るわせて言った。
「こ…こっちのティティが本物でいい…」
見れば目を幸せの色に潤ませてながら鼻血を出していた。
駄目な姉…というか、妹の時と同じこと言ってる…。
「すげぇ…こんなに満ち足りたマカマカを見たのは初めてだ」
「なるほど、これがこの星の文化にある妹属性というものですか」
「すごですね。今度お店で妹フェアーを開催しちゃいましょうか」
ティティBとマカマカがヒシッ!と抱き合っている姿を見ながら俺たちは好き勝手なことを呟く。
見れば片腕を解放されたワーニャ姫がティティAごと引きずってこっちに戻ってきた。
「はぁはぁ…はぁはぁ…ひ、必死になれば…はぁはぁ…逃げれるものみたい…ね」
「あぁん、徐々に魔王さまがたくましくなって行くのがわかります〜(はぁと)」
昔は組み伏せられて終わりだったチビ姫も、逃げるのに必要な筋力が発達しているようだ。
「ティティ、姉ちゃんはなお前を本物だと証明しなければいけないんだ」
「うん」
「その為には触った時の反応や、撫でた時の声、▲れたの吐息が必要なんだ。これはあたしだからこそわかるんだ。ティティのことなら隅々まで知っているから! 歯の形から●○の色からお×※の(())の数まで! だ、だから、だからな? ティティ」
徐々に目の色を先ほどまでとは別の意味で変えていた。
鼻息と吐息を荒くしながらティティBの肩を抱きマカマカは、物陰へと進んでしまった…。
「姉ちゃんな、こういう時のために色々と技を考えていたんだ。ちょっとすごいぞー」
「とても…楽しみです…」
そして姿が完全に俺たちから見えなくなる。

「…わざ?」
シグマが不思議そうな顔でマイムを見ていた。
「まだシグマには早いわね。もうちょっと大きくなったら教えてあげるからそれまで我慢しましょうね」
「…うん、わかった」
いや、あんた達ロボットなんだから成長しないでしょ…。
「しかし…アレだな。次の展開読めるな」
「そうですね。少々楽し…いえ、困ったことになるかもしれませんね」
クラヴィエは表情をかえずに二人が消えて言った場所を見ている。
あの物陰では何が行われていることやら…。
「魔王さま、あっちに負けていられません。実はわたしももしもの時にと技を研究していました。も、もも、もしよろしければご披露させていただいてもよろしいでしょうか」
「こらああ! 服を脱がさない、でっ、あっ! さっきも触られたからまだ…ぅっ…」
「魔王さま、体は正直ですよ(はぁとはぁと)」
「こんな…ひ、人が見てるでしょバカ! ヘ£※イ! ていうか助けなさいよクラヴィエ! コペケバ!」
「わたしの技にはギャラリーが必要ですのでここでいいんですー(はぁと)」
「ひいいぃぃぃぃぃぃぃぃーーー!」
こっちでもティティが大暴走中。
ギャラリーが必要な技ってどんなんだよ。
ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!
「な、なんだ?!」
突然マカマカとティティBが消えていった物陰から激しい振動音が聞こえてきた。
ま、まさかとは思うが…これが戦士の×××…?
そんな激しい音の中でも、マカマカの…若干艶を帯びた声が聞こえてきた。
「はぁはぁ…いくぞー! ティティ! ティティ! まずはこの技ぅ…」
まずは、っときたか。
「カオナのツララ落としっ!」
ズガーン! ズガーン! ズガーン!
「イモエンの渦巻き返し!」
ズガーン! ズガーン! ズガーン!
「マニペトの連続花弁回転!」
ズガーン! ズガーン! ズガーン!
全部効果音一緒じゃん。
本当にあの物陰の向こうで何が行われているのかが気になる。
もしこれが濡れ場だというのなら…クス・クス恐るべし…。
技の名前が20個目になろうかという頃、俺たちはすでにマカマカ達に興味を失っていた。
色っぽさもないので、ティティ×ワーニャの時と比べて気まずさもない。
と、不意に音が止まった。
「終わったかな?」
「そのようですね」
「では飲み物を用意してきます」
マイムは手にしていた本をパタンと閉じると椅子から腰をあげる。
それと同時だった。
「うわああああああああああああ! お、おまえはなんだー?? 誰だ??」
マカマカの悲鳴。
まぁ予想済みのことなので、目をやったのは最初。
マイムもすぐにキッチンの方へと行ってしまった。
ドガシャン!!
けたたましい音がした。
見ればティッシュをシーツのように体に巻いたマカマカが倒れていた。
マカマカを吹っ飛ばした主が、ゆっくりと姿をあらわす。
「あたしより強い奴に会いに行く」
胸の前で拳と手の平を合わせて、唇の端を引き締める女戦士の姿。
予想を裏切ることなく、二人目のマカマカがそこにいた。
〜つづく〜
文・魁(ビジュアルアーツ・mana)
イラスト・ごとP
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