2008年04月28日
【せなか企画】 せな★せな 8−3話 「マカマカ大地に立つ!」
せな★せな 8−3話
「マカマカ大地に立つ!」」
「いっくわよ〜っ!」
楽しげな雄叫びを上げ、レバーをぐいっと前に入れるチビ姫。
たったったったったっ。
まるで何かに操られているかのように、剣を振り回しつつ闇雲に突進していくビキニ鎧。
「ってまあ、実際操ってるんだけどさ、俺らが」
「わたしは無敵の宇宙人よっ! 我が星の科学力を持ってすれば、あんたたちみたいな原始的で非力な軍隊など……」
「前口上はいいからちゃんと操作しろって」
そんなことしている間に、距離を詰めすぎてしまった。
『うああああ止まらない〜っ!!』
べきっ。
屈強なアメリカ兵にライフルのストックで殴り飛ばされ、その場に昏倒するビキニ鎧。
「接近戦弱いな、こいつ」
「いつも最強の剣士とかおっきなこと言ってるくせに、だらしないわね〜」
『こっちにだって間合いとかタイミングとかいろいろあるんだっ!っていうか操るんならもっとちゃんとやれえっ!』
「ゴチャゴチャうるさいわよっ! CVが山口◆平で口調が関西弁にならなかっただけでもありがたく思いなさいっ!」
ぐりぐりぐりぐりっ。
テキトーにこねくり回されるアナログスティック。
『うわああっ、なんで勝手に足が開くんだああっ!』
生意気言った懲罰に恥ずかしいポーズを取らされる自キャラ。
「お、ビキニ鎧のM字開脚とはなかなかマニアックだな」
「次はお尻をこっちに向けて、親指を口元に持っていきなさい、ほーらうりうりっ☆」
「つーか、どう操作するとできるんだ、それ?」
『だからやーめーろおおおっ!』
「お、余計なことしてたら周り全部囲まれたぞ」
ぱんっぱんっぱんっぱんっぱんっぱんっ!
その場にそぐわない悩殺ポーズ絶賛実行中のビキニ鎧に向け、四方八方からおひねりのように乱射されるライフル。
「にゃあああっ、ものすごい勢いでシールドが減ってくし〜」
『痛い痛いっ痛たたたたたっ、ちょっとは避けろおおおおっ!』
こてっ。
「あ。死んじゃった」
剣士マカマカ、ここに散る。
「もう一回よっ!」
すかさずメニュー画面から場面を選択。
ぎゅわわわわ〜ん♪
それっぽいジングルと共に、タイトル画面が現れた。
『マカマカ大地に立つ!』
「おー、面タイトルもちゃんと差し替わってるな」
「芸が細かい移植ねえ」
そして舞台はアメリカ片田舎の農場へ。
『うわっなんだここっ!? あたしなんでこんなところにいるんだ!?』
『ぎゃあああ、火星人だああっ!』
『だれが火星人だっっ!!』
「姉さま、頑張って〜(2代目クローン)」
まんまと巻き戻っている姉と、無責任に応援する鬼畜妹。
「今度はちゃんと距離とって行くぞ」
「わかってるわよ! いちいち指図しないでよねっ」
言ってるそばからレバー前入れ→全力疾走させるアグレッシブプレイヤーチビ姫。
「わたしは無敵の宇宙人よっ! 我が星の科(以下略)」
「おまえホントに学習能力ないなあ、いい意味で」
『カラダが勝手に動くうううっっ!!』
敵の攻撃を間一髪で躱しては、怪光線でばったばったと倒していくマカマカ。
「おっ、今度はけっこうイケそうだな」
さすがは歴戦の勇士、一回死んでも経験は経験として蓄積されているらしい。
サクサク進んで、アメリカ軍との直接対決フェーズへ。
『うおおおおおおおおっ!!』
愛剣を振りかざし、猛突進するマカマカ。
「死ねええええっ!」
ぴょこん。
絶妙の間合いから、何の脈絡もなく垂直ジャンプ。
げしっ。
着地したところをぶん殴られ、またも地面で昏倒した。
「すまん、ボタン間違った」
「ダメじゃないコペケバ〜」
『謝るならあたしに謝れええっ!』
「うあ、シールドもうほとんどないな」
「めんどくさいから特攻させちゃいましょ」
『ライフ的にもうダメだからって捨てプレイに移行するなあああああっ!』
言葉とは裏腹に、自ら敵軍の真っ直中に突進していく勇猛果敢なビキニ鎧。
もちろん多勢に無勢、囲まれてフルボッコ。
「あ、また死んじゃった。リプレイリプレイっと」
ぎゅわわわわ〜ん♪
『マカマカ大地に立つ!』
『うわっなんだここっ!? あたしなんでこんなところにいるんだ!?』
『ぎゃあああ、火星人だああっ!』
『だれが火星人だっっ!!』
「姉さま、頑張って〜(3代目クローン)」
ぎゅわわわわ〜ん♪
『マカマカ大地に立つ!』
『うわっなんだここっ!? あたしなんでこんなところにいるんだ!?』
『ぎゃあああ、火星人だああっ!』
『だれが火星人だっっ!!』
「姉さま、頑張って〜(4代目クローン)」
ぎゅわわわわ〜ん♪
『マカマカ大地に立つ!』
『うわっなんだここっ!? あたしなんでこんなところにいるんだ!?』
『ぎゃあああ、火星人だああっ!』
『だれが火星人だっっ!!』
「姉さま、頑張って〜(5代目クローン)」
どうしても面クリできないまま、マカマカが大地に立ち、そして散っていく回数ばかりが無駄に増えていく。
「ここから先が問題だなあ……」
「もう飽きてきちゃったわよ」
「私が思うに、闇雲に突進するだけでは攻略できないのでは?」
「そうだな……ちょっくらマニュアル見てみるわ」
『ていうかそういうのはゲーム前にちゃんと見ろおっ!』
「えーと、ふむふむ……なんか地球人に変身して波風立たせずミッションクリヤーとかもできるらしいぞ」
「本物の宇宙人はそんな卑怯なことしないわっ!」
「さすがに本物が言うと説得力ちがうなあ」
『ってちがうだろっ! 隠れて体力回復とか遠くから狙い撃ちとか、もっとやりようがあるだろっ!!』
「自キャラの分際でプレイヤーにダメ出しなんて、いい度胸じゃない?」
『だから敵に突っ込ませるなあああああっ!』
ぱんっぱんっぱんっぱんっぱんっぱんっ!
言ってるそばから集中砲火を浴びているマカマカ。
「またシールドほとんどなくなっちゃった」
「なあ、その辺の木とか家に攻撃するとどうなるんだ?」
「いいところに気づくじゃない、コペケバ」
「だろ?」
すかさずその辺をテキトーに狙って、光線銃を乱射してみる。
ばしゅばしゅっどがんっぐおおおおおんっ!
大げさな効果音と共に、炎を噴き上げ砕け散る家の壁。
「おお、作り込んであるなあ」
「うっわー、どうせ敵わないからって善良な民間人の財産を蹂躙してるわ、この凶悪宇宙人」
『おまえらがやらせてるんだろうがあっっ!!』
「良いも悪いもリモコン次第〜♪」
「ていうか、ここから先ってUFOに乗り込まないとクリヤーできないんじゃないのか?」
「そんな楽したって面白くもなんともないわ。たとえボロボロになろうが、身ひとつで突き進むのが真の凶悪宇宙人というものよ」
「おお、漢プレイだなあ」
『ボロボロになってるのはあたしの身体だあ!!』
「そしてすかさず牛をキャッチよっ!」
「おお、がってんだっ!」
びびびびびびびび〜っ!!
『ぶも゛〜〜〜っ(CV:牛)』
『だからいちいち牛にかまうなあああっ!』
「俺、喉乾いたからちょっと休憩な。操作任せた」
「クラヴィエ、わたしもおなかがすいた〜」
『せめてポーズボタンを押していけえええええっ!』
奮戦中のビキニ鎧、やむを得ない事情により総受けから放置プレイに移行。
当然のように敵に囲まれ、いろいろとフルボッコ。みるみる減っていくシールド。
絶体絶命という、その時だった。
『うおおおおおおおおおおおっ!!』
裂帛の気合いと共に、画面のマカマカがゆっくりとこちらを振り向いた。
「うあっ!? こいつ操作してないのに動いたぞ?」
さすがは星一番の狂戦士、尋常じゃない精神力だ。
『さんざんヒトをオモチャにした借り、今たっぷり返してやるからな……』
ものすごーくドスの効いた声が、テレビのスピーカーからおどろおろしく流れた。
人事不省になっているノナドポイアをすちゃっとかまえ直す。
そして……
『きえええええええええええええっ!!!』
テレビ画面が紅蓮の炎で満たされた。
「この展開も何度目なんだよぉっ!」
「にゃあああああああっ!」
画面の真ん前にいた俺とチビ姫が避けられるはずもなく。
荒れ狂う熱風が収まった時。
そこにあったのは、顔中こんがり黒焦げになった俺と、全身こんがり黒焦げになったチビ姫と、そして……
哀れな姿に変わり果てた、俺の25インチブラウン管式地デジテレビだった。
「うああああっ、俺のテレビがあああっ!」
「……まずそこを気にするのですね」
例によってちゃっかり退避していたクラヴィエが言う。
「……けほけほけほっ」
盛大に咽せながら、むくっと起き上がったチビ姫。
「……ていうか、よく生きてるなあ、おまえ」
宇宙人って案外丈夫なつくりだなあと。
「ああ魔王さま、このような変わり果てたお姿になって……このティティが誠心誠意お手当しますっ! まずはこの焼け焦げたお着物を……」
「だからいちいち脱がそうとするなああっっ!」
一難去ってまた一難。
「特別中立地帯における戦闘行為を確認。強制介入により武装解除」
妙に冷徹なロリ声が、戸口の方から聞こえてきた。
振り向くと、いさましいちびの戦闘ドロイドことシグマ(490)さんが、熱線砲らしい大仰な武器をかまえて仁王立ちしていた。

「っておまえの仕業かあああっ!」
「特別中立地帯における戦闘行為を確認」
ある意味天敵の登場に、逃げまどっていたチビ姫がすかさず詰め寄る。
「ちょっと! なんてことするのよあんたはっ! みんなで仲良くゲームしてただけでしょっ!」
「特別中立地帯における戦闘行為を確認」
あいかわらず融通が利かないロボっ子。
その時、わずかに開いた戸口から、別のこびとが現れた。
「あらあらシグマ、これは戦闘行為ではないでしょう?」
きちんと着こなした紺色のメイド服に、のほほんとした口調。
シグマの保護者兼メイド喫茶『しぐまいむ』経営者、マイム(016)さん登場だった。
「……………」
そこはかとなく機械っぽい仕草で、あらためて辺りを見回すシグマ。
「……げーむ?」
すっごく自信なさげに聞いてきた。
ぶんぶんぶんぶん。
全員で首を縦に振る俺たち一同。
「……………」
ぐいーん、かしゅん。
自慢のおっきな武器とかスラスターとかを、意味もなく動かしてみるシグマ。
その瞳にじわっと涙が浮かんで……
「ひっく……えぐ……」
「あーあ、また泣いちゃった〜☆」
「つーかさ、どうしてくれるんだよ、俺のテレビ……」
変わり果てた姿のテレビを呆然と眺める俺に、チビ姫がもっともらしく言う。
「ブラウン管テレビがないんなら、大画面液晶で楽しめばいいじゃない」
「……今この場で革命起こしていいか? マジで」
「ほらシグマ、みんな怒ってないから、泣かなくていいのよ?」
さりげなく被害者感情を自分側に有利に誘導しつつ、物騒な戦闘少女の頭を撫でるメイドさん。
「ん」
素直に頷き、手の甲できゅっきゅと涙を拭うシグマ。
「でも……きょう、おやつぬき?」
「そうねえ……」
頬に指先を添えて何やら考えてから、マイムはいたずらっぽく片目をつぶる。
「見たところ被害は軽微なようだし、シグマはちゃあんと頑張ったんだから、今日はイチゴのエネルギーケーキにしちゃいましょう」
「わーい」
超強引にほのぼのモードへ移行完了。
「……いやいや、甚大な被害が出てるから」
黒焦げテレビを指さして訴える被災民、ていうか俺。
「そうよそうよっ、わたしの華麗なプレイを邪魔した落とし前、どうつけてくれちゃう気よっ!」
便乗して騒ぎ出すクレーマーチビ姫。
「その辺りはプライスレスなので算定不能になっちゃいますが……」
俺の部屋の惨状をぐるりと見回すマイム。
それからきちんと姿勢を正して、俺に向き直る。
「これは当方の落ち度ですので、早急に同等品を手配させていただきます」
一見ぽえぽえだけど、こういうところが妙にきちんしてるのは、さすが『調停者』だ。メイド喫茶の売り上げで貯金しこたま貯めてるし。
「そりゃありがたいけどさ、今時ブラウン管式地デジテレビなんて日本橋中探してもないぞ」
「では、申し訳ありませんけど、現行型の受像装置で代替ということで」
「……マジで?」
「はい、ご主人さま(はぁと)」
「奥行きがうっすい流行りのやつとかでもオッケー?」
「もうっ、ご主人さまったらおねだり上手なんだから(はぁと)」
萌えーな仕草でちょっぴり呆れてみせる。さすがはそっち系職業メイドさん。すっごい破壊力だ。
「わかりました。でも、今回だけ特別ですよっ?」
唇に人差し指を当て、小首を傾げてばちっとウインク。
「わーい」
めっちゃ素直に喜ぶ俺、20歳大学生。
「それでは、今回の件に関してはこれで解決ということで、わたしのお店でお茶にしませんか?」
そしてメイドさん、すかさず営業トークに移行。
「とっとと行くわよっ! ちょうどお腹空いてたとこだし」
もちろん即決するチビ姫。
「あの、マイムさま、これからの茶会の分の料金もそちら持ちと考えてよろしいのでしょうか?」
「魔王さま、わたしもお供しますっ(はぁと)」
当然のようにぞろぞろ着いていくこびとたち。
「ま、いいか……」
俺も付き合うことにする。
いろいろ大騒ぎだったけど、液晶テレビが手に入るならチャラってことでいいだろう。いや、マカマカが割ったガラスの分があるか。
と、そこまで考えてから。
「……………」
一人忘れていることに気づいた。
その時。
背後でなにか、尋常ならざる気配がした。
恐る恐る振り向く。
ざーーーーーーーーー……
完膚無きまでに壊れたはずのテレビ画面に、無機質な砂嵐画像が映っていた。
それがだんだん鮮明になっていって──
ずるり。
黒焦げになった人の手が、画面の縁からこちらに、食み出すように現れた。
全員が無言で見守る中、テレビの中から現実世界に、ゆっくりと這いだしてくる亡霊。
長い髪を振り乱し、瞳を爛々と輝かした、この世のものとは思えぬ醜怪な姿。
ぶっちゃけ、ボロボロ&黒焦げのマカマカ姉さんなわけですが。
殺意が山盛りに籠もった視線で俺たちのことをガン見しつつ、こっちもかーなり怒っているらしいおっきな剣を振りかぶる。
「さあ、ゲームの始まりだああああっ!!!」
(これ以降は残虐な暴力描写を含むため削除されました)
〜つづく〜
文・涼元悠一(アクアプラス)
イラスト・駒都えーじ
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